下痢
急な下痢ですか?長く続いている下痢ですか?
下痢の原因には感染性(細菌性やウィルス性)の他にも、免疫が関連したもの、ホルモンが関連したものや薬剤性など様々なものがあります。原因を推定するのに経過が大切なので急性の経過なのか、慢性の経過なのかを確認します。急性の経過で重篤でない下痢は自然に軽快していく方が多く、基本的には対症療法で必要に応じて抗菌薬も使用します(ご高齢の方や小さなお子さん、基礎疾患のあるかたは注意が必要です)。2-3週以上症状が継続するような場合には、特殊な感染症や他の原因がないか検査を検討します。問診や身体診察や一般的な血液検査や尿検査、内視鏡検査などの検査です。
感染性腸炎
ウィルス性、細菌性、寄生虫の感染性腸炎があります。基本的には対症療法で自然軽快を待ちます。脱水にならないように注意が必要です。問診によって推定される病原体もあり、場合によっては抗菌薬の処方が必要なこともあります。
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、血便を伴う下痢とよく起こる腹痛です(血便のない方もいます)。膿(うみ)みたいなものが出るとおっしゃる方もいます。直腸のみの炎症がある方から全大腸に炎症が及ぶ方もいます。難治の方は免疫を調整する薬や免疫を抑える薬が必要になったり、大腸摘出する必要がでたり、慢性の経過に伴い大腸腫瘍を合併することもあるので、慢性の経過の方は除外したい疾患です。
クローン病
口から肛門までの消化管(特に小腸や大腸)に炎症がおきて、特徴のある潰瘍ができる原因不明の炎症性疾患です。それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます。炎症により腸が細くなり腸閉塞の原因になることもあります。腸閉塞を改善するために細くなってしまった腸の一部を切除する必要がでることもあり、また繰り返して手術が必要になる方もいます。長期的に炎症をコントロールするために免疫を調整する薬や免疫を抑える薬が必要になることもあります。前述の潰瘍性大腸炎と同様に慢性の経過の方では除外したい疾患です。
抗生物質関連腸炎
抗性物質投与により腸内細菌叢のバランスが崩れ、浸透圧変化や吸収障害をきたし、特定の菌種が増殖し下痢が引き起こされる病気です。C.difficile、Klebsiella oxtocaという細菌が検出されることがあり、便の検査で確認することができます。抗生物質の中止で改善するケースもありますが、効果のある抗菌薬を処方することもあります。
薬剤性腸炎
さまざまな薬剤が下痢の原因になりうるので、下痢の発症と関連のある薬剤の使用歴がないかを確認します。変更可能な薬であれば変更を提案します。
腸以外の臓器に原因がある下痢
膵臓疾患、内分泌疾患、その他の臓器にも不調が生じる全身の疾患などが原因であることもあります。一般的な原因検索で同定できず、経過が長い場合に検査を考慮します。『下痢とは関係なさそうなトラブルも実はあって・・・』という方は、全身疾患の診断のヒントになりうるのでお知らせください。
検査ではよく分からなかった下痢
血液検査や内視鏡検査、特殊な検査でも原因が分からなかった場合に過敏性腸症候群を考えて治療をします。