ピロリ菌って?
お伝えしたいこと
- 胃潰瘍や胃がんのリスクになります
- 採血や便などでも検査可能です
- 最後に胃カメラを受けたのが2013年以前という方は要注意です
- 除菌治療は1週間の服薬です
- 除菌成功後も油断はできません
- 陽性の方はご家族にも情報提供をお願いします
胃潰瘍や胃がんのリスクになります
ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)は1983年に慢性胃炎の粘膜から発見されて、発見者は2005年にノーベル医学生理学症を受賞しました。ピロリ菌による慢性胃炎は胃粘膜の萎縮を引き起こします。萎縮粘膜を背景に胃がんが発生することが知られています(※1)。また胃潰瘍、十二指腸潰瘍のリスクとなることが知られ、ピロリ菌感染者は6倍ほど罹患しやすいことが知られています。
※1 ABC検診のA群(ピロリ菌なし萎縮なし)B群(ピロリ菌あり萎縮なし軽度)C群(ピロリ菌あり萎縮高度)D群(ピロリ菌なし萎縮高度)の1年間の胃癌発生頻度【A群0に近い、B群0.1%、C群0.2%、D群1.2%】から分かるように、ピロリ菌感染とそれによる胃粘膜萎縮は胃がんのリスクになります。注)ピロリ菌に感染していない方も胃癌に罹患することはあります
最後に胃カメラを受けたのが2013年以前という方は要注意
2013年より、それまでの適応症に加えてピロリ菌による慢性胃炎に対しても除菌治療が保険適応となっています。このため最後に胃カメラを受けたのが2013年以前という方は、結果説明の際にピロリ菌の検査や除菌治療について提案されていない可能性がありますので注意が必要です。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌に感染しているかどうかの検査方法には、以下のようなものがあります。ここでは比較的簡便な採血によるものと除菌後の効果判定に用いられる検査についてご紹介します。いずれの検査も後日に検査結果が判明致します。保険適応になるのは、ピロリ菌感染を疑う所見が内視鏡検査やバリウム検査である場合に限られます。
○血液中抗体検査 血液中の抗体価を測定するため血液検査を行います。先述のABC検診にも用いられております。感染の診断検査に用いられますが、一般的には除菌後の効果判定には用いらていません。
○尿素呼気試験 空腹で来院いただき検査薬服用前と服用20分後の2回に専用パックに息を吹き込む検査になります。除菌後の効果判定にも利用しています。
○便中抗原検査 専用容器をお持ち帰りいただいて、ご自身で採便する検査になります。除菌後の効果判定にも利用しています。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌感染に伴う所見がある場合に除菌治療の適応になります。除菌治療は1週間の服薬による治療です。製剤により異なるものの3種類(胃酸を抑える薬1種類と抗生剤2種類)を朝、夕に服薬します。服薬終了後1-2か月後に前述の検査によって効果判定を行います。成功率は9割程度になり、除菌に成功しなかった場合(一次除菌失敗)は2次除菌の適応になります。2次除菌も製剤に変更があるものの服薬と効果判定のスケジュールは1次除菌と同様です。
除菌治療成功後の注意点
ピロリ菌の除菌によって胃潰瘍や胃がんリスクは低下します。除菌成功後も注意すべき点がいくつかあります。
○除菌成功後も胃がんが発生してしまう
除菌によって胃がんリスクは3分の1程度に抑えられますが、それでも胃がんは発生します。このため除菌後も定期的な内視鏡検査の機会を設けることをお勧めしています。
○飲酒や喫煙などの食道疾患のリスクがある方
○十二指腸にも腫瘍が発生することがある
このような点から除菌後も検診なども利用しながら定期的な内視鏡検査をお勧めしております。
陽性だった方はご家族にも情報提供をお願いします
患者さんからは『どうしてピロリ菌に感染したのか?』と聞かれることがあります。一般的には幼少期に環境からの感染や家庭内での感染が言われております。ご自身がピロリ菌感染を指摘された方は、ご家族の中にもピロリ菌感染症の方がいらっしゃるかもしれません。ご家族へも情報提供をお願いいたします。ピロリ菌の診断検査は、内視鏡やバリウム検査を受けなくてもABC検診などをきっかけにすることもできます。