脂質異常症と言われたら…　お伝えしたいこと

• 動脈硬化のリスクになります
• 急いで治療を開始した方が良い方もいます
• リスクや目標値は人それぞれです
• 治療の基本は生活習慣を整えること
• 脂質異常症のお薬について
• 投薬開始後も生活習慣を整えましょう

 

 

動脈硬化のリスクになります

　脂質異常症はいわゆるコレステロール値の異常で、動脈硬化（血管の壁にトラブルが起きた状態）のリスクと言われています。血管のトラブルが高度に及び、血流が途絶えてしまうと途絶えた先の臓器が機能しなくなり、心臓や脳であれば心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こします。これらの病気は急な転帰をとる緊急性の高い病気なうえに、生活に支障を来すような後遺症を残すこともあるので、発症しないように予防に努めたいところです。

　動脈硬化の主な危険因子としては、脂質異常症（高LDL血症、高TG血症、低HDL血症）の他にも、加齢、高血圧、糖尿病、慢性腎疾患、喫煙、冠動脈の家族歴などが知られています。危険因子をいくつかお持ちの方は、よりリスクが高いということになります。

急いで治療した方が良い方もいます

　脂質異常症は自覚症状がほとんどないことが多いです。明らかな狭心症の胸部症状がある方や歩行時の下肢痛などの症状がある場合に脂質異常症の投薬以外に介入が必要な事がありますので、「最近実は・・・」など気になる事があればお伝えください。

将来のリスクや目標値を確認しましょう

　同じコレステロール値でも既往症や併存するリスクの数によって、将来のリスクも異なり目標値も異なってきます。このため「同じコレステロール値なのに、隣の〇〇さんは様子見で良いと言われて、私は薬が必要と言われた？？」みたいなことがありえます。リスクや目標は人それぞれなので、受診いただいた方には現状のリスクと目標を共有させていただいたうえで、生活習慣是正と投薬治療を始めるタイミングを検討させていただいております。

現時点での動脈硬化の状況を確認しておきましょう

　動脈硬化の状況を調べるには問診や診察だけでなく、頸動脈エコー検査、血管機能検査（ABI、CAVI）などが実施可能です。症状や検査結果次第ではすでに、投薬以外の治療介入が必要な方もいます。「数年来検査異常を指摘されていたけど、放置していた・・・私の血管大丈夫？」という方はご相談ください。

治療の基本は生活習慣を整えること

①食事

摂取不足に注意！

　食物繊維、植物ステロール、野菜、青魚に含まれるｎ-3系多価不飽和脂肪酸、

摂りすぎ注意！

　カロリー、糖質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、アルコール、塩分

②運動　～無理なく始めて、無茶せず続け、けがにご用心～

無理なく始める

　歩行程度を毎日30分以上、少なくとも週３日、小分けでもOK！

　もっと無理なく♪　１日プラス１０分からでも

無茶せず続ける

　元気な時にだけ、脱水には要注意、暑さ寒さの厳しい時期は外での運動を控えて屋内での運動も

　例）ベンチステップ運動

くれぐれもけがにはご用心下さい

※重篤な持病（重篤な心疾患やコントロールの極端に悪い糖尿病や高血圧、眼底出血を合併した糖尿病増殖性網膜症、尿毒症、高度腎不全、急性感染、高度糖尿病自律神経障害、糖尿病壊疽など）をお持ちの方は、運動療法を控えたほうが良いと思われるのでご相談ください。

③適正体重の維持

　食事、運動を整えることで適正体重を維持しましょう。体重過多は万病のもとになります。体重過多が影響した膝の痛みで運動が困難になったり、持病のせいで運動制限する必要がでるとより減量しにくくなるという悪循環に入ってしまう方がいます。大学や総合病院の専門外来をしていた時にはあまり意識していなかったのですが、膝でお困りの方が多い事は日々痛感しています。血管だけでなく、膝をもむしばむ体重過多は早めに着手したい手ごわい相手です。

脂質異常症のお薬

　生活習慣の修正などでも目標達成に至らない場合は３か月程度を目途に投薬を開始します。

　脂質異常症の治療薬としては、スタチン、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、選択的PPARαモジュレーター、フィブラート系薬などがあります。脂質異常症のパターンにより使用する薬剤が異なるので、検査結果に応じて処方内容を検討します。治療を開始した後は、効果や副作用の有無の確認のために血液検査を実施します。概ね処方内容が確定した後も、併存疾患の状況で治療目標値が変わることもあり、定期的（3-6か月毎など）に血液検査でコントロール状況を確認する必要があります。

※投薬を開始した後も生活習慣を整えることは、脂質異常症ならびに動脈硬化性疾患の基本なので継続して下さい。